残されたもの/
春日線香
不発弾を掘り出したというので見にきたが
大きな穴が埋められもせず空いているだけだった
校庭には名残の雪が汚れた骨のようで
からっ風が髪を乱して吹き去っていく
花壇にはパンジー どれも顔みたいに見える
池の鯉は氷の下で口をぱくぱくさせている
下校の時刻を告げる鐘は消えやらず
やがてあたりは夜の闇にまぎれて
念のためにもう一度覗きこんだ穴の底にひとつ
小さな白い卵が産み落とされていた
戻る
編
削
Point
(1)