沸点の雨/________
いなびかりが消える前に
濡れた制服の女の子に
ワイパーが生む摩擦に
思い出してしまって大変
黙って指なんてなぞる
雨に拒絶された車の中の
あなたとわたしと蚊
輪郭があやふやになった電信柱が溶けて
じゅうじゅうじゅうと流れて行った
ぱちん
体にぴたりとくっついた足と、体からとぎれた足と少しの血液
手のひらを覗き込んだあと二人思わず目を合わす
わたしたちは見えるもの見えたとおりでそれが真実と思い込む
喉の奥がちりちり燃えて可哀相だからキスしない
あなたがどんなに手馴れて近づいても
わたしがどんなにこんなにあんなでも
絶対、絶対
境界線がなくならない
ばたん
窓の外に直線がなくなったことに気づく前に
外に飛び出たわたしたちの輪郭線が溶けて
自由自由自由と流れていくのを
車の中から眺めてそれを
さあ真実と思い込もう
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