マリア/藤原絵理子
きみの旅が終わる時
黒ずんだザックの中には
通り過ぎてきた街の悲しみが
薄汚れた上着のポケットには
誰にも見せたくない たからもの
それはきっと
今のきみにとって
おおい隠してしまいたいもの
だけどきっと
いつか未来のきみが
やさしい雨で育てるもの
疲れ果てたからだを
あたたかい言葉のシャワーで
こころに貼りついた鎧の残骸を
聖母マリアの抱擁で
そのままのきみを
まるく包んであげたい
あたしの髪も腕も胸も
今夜は
そのためにあるんだから
幼い子供のように
声をあげて泣いてもいいよ
刻まれた傷の痛みに
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