夢のかけら/藤原絵理子
いくつもの季節踏みしめ
過ぎゆく時を気にもせず
駆け続け ひたすらに
足元だけ見つめて
こころ揺らす野辺の花
こころ誘う憧れを
しまい込んだ小箱の
朽ちるにも気づかず
ゆく川に笹舟浮かべていた
虫を追い深い森に迷い込んだ
まわりのすべてがきらめいていた
少年の日の夏の夢
遠ざかる哀しみ抱きながら
ときおりは眠れぬ夜
扉たたく風の音
よみがえる熱い想い
暗闇に映えて
燃え残る夢のかけら
失くさぬよう拾い集め
胸の奥 青い小瓶に
灯しつづけたい
夕餉の紫煙うすく漂っていた
夕闇に蛍追いかけていた
横顔の少女にあこがれていた
少年の日の淡い夢
零れ落ちるのを眺めながら
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