女たち/草野春心
 


  女は戯画のなかのインディアンみたいな出で立ちをして
  紙紐を使って ベッドに男の四肢を括り付けていた
  人工の冷めた光は磨りガラスの窓を白く染め
  取れかけた口紅を不気味に照らしつけ
  女を魔なるもののように見せていた


  その四角い部屋には 大きなピアノが一つ置かれていて
  鍵盤の前には もう一人の女が座っていた
  女には両腕がなかったが 空調からの微風で譜面が捲れると
  音楽が 緩やかに 次の局面へ移っていくのが誰の耳にもわかった
  無論、ベッドの上で岩石のごとき裸体を晒し
  乾いた双眸で天井を見つめる青年の耳にも



  ベ
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