黒い掘削船/ただのみきや
 
を通わせろ
  理性はスライドを繰り返し激しく回避する
  失語故の叫びが重複したディミニッシュの翳りに
  これは眩暈じゃなくてビブラートなんだ(あざといね)
  悪いのはアタマじゃない指先なんだ(まともなんだ)
  バイブルを捲るのもビブラートをかけるのも
  Rの発音もみんな先端から沸々と発芽する葛藤なんだ
  にゃごにゃごと猫頭を撫でじゃらす咥え魚の愛人よ
  空虚な立脚点へこすり付ける
  コレハオレノニオイ だが
  釣ったり釣られたりしながら像にならないもの
  逆巻くはみ出すクロニクルは
  くびれた疑問の群生地となり 果てる

掘削船が去って行く
残された干潟の心象に
蟹のようにぞろぞろと奇態な言葉が湧き孵るが
どれも伏し目がち 斜と廃のアングル

   
     《黒い掘削船:2014年1月26日》





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