この春に/板谷みきょう
 
わたし19のこの春に 
命を捨てに参ります 
積丹半島 神威岬 
念仏トンネルくぐって行きます

わたしの好きなあの人は 
関係ないと言ったけど
耳の聞こえぬそのことで 
あの人の親が反対しています

聞こえぬことは運命だと 
諦めることも出来ようが
彼と別れるそのことは 
運命にしてもあまりに辛い

わたしの好きなあの人と 
この世に二人きりならば
親も世間も気にせずに 
このまま二人一緒になれたのに

仕事をしようと思っても 
ろう者と知ると断られ
やっと見付けた縫製工場 
手真似の話で職場の人が

手真似で話をしていると 
みんなが指差しコ
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