さまよえる黄昏/ichirou
午前2時
風にのって同報無線が聞こえてくる
行方不明の方の情報が明かされる
パジャマ姿 86歳のおばあちゃん
念のため外へ出ると
パジャマではとても耐えられない寒さだ
そんな寒さは忘れても
絶対に忘れられない大切な何かを
探して歩いておられるのか
それがもう現実にないものであっても
私たちにとって虚構であっても
おばあちゃんは現実に探している
おばあちゃんには虚構は存在していない
すべて現実なのだ
私たちの意識でこのおばあちゃんを表現するなら
現実の世界と虚構の世界をさまよっている
旅人なのだろう
私は不謹慎にも
このおばあちゃんの
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