さまよえる黄昏/ichirou
 
午前2時
風にのって同報無線が聞こえてくる

行方不明の方の情報が明かされる

パジャマ姿 86歳のおばあちゃん

念のため外へ出ると
パジャマではとても耐えられない寒さだ

そんな寒さは忘れても
絶対に忘れられない大切な何かを
探して歩いておられるのか

それがもう現実にないものであっても
私たちにとって虚構であっても
おばあちゃんは現実に探している
おばあちゃんには虚構は存在していない
すべて現実なのだ

私たちの意識でこのおばあちゃんを表現するなら
現実の世界と虚構の世界をさまよっている
旅人なのだろう

私は不謹慎にも 
このおばあちゃんの
[次のページ]
戻る   Point(11)