バッターボックス/
草野春心
見知らぬ男が一人
バッターボックスに立って
枯れ葉のような色をした 外套のボタンをはずした
上から三番目、ひどくほつれて、取れかかったボタンだ
透き通った湖の淵で 私は 動きを止めた水面を見つめる
青い空と 私は そこでだけは
一枚の絵のうちに居られるのだが
ひとつのヒットも打っていないのに
ダイヤモンドを時計回りに一周すると
男はぼろいボタンを掛け直してその場を後にする
風の 細い通り道に 光の雪がふっている
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