滑らかな掌が部屋の中で/草野春心
 


  滑らかな掌が 部屋の中で
  私たちの内のどちらかをさがしている
  (夜は こんなにも 明るいというのに)
  捩じれた、青白い樹の 影が、こごえている
  いつか 囁きに似た笑みが 床に溢れたままになっていた事は
  私だけが思い出しているのだろうか 棚に背を押し付けて座り込みながら



戻る   Point(2)