サトゥルヌス/
春日線香
庭から上がってきたのはサトゥルヌスである
雪の日に来るとは思っていなかったから
ろくに用意もしておらず
急いで台所からあんぱんを出してくる
ぎらついた目が あんぱんか と言っている
毛むくじゃらの手でためつすがめつしていたものの
何もないよりはましだと納得したのか
大口を開けてがぶりとかぶりつく
口の中に何列にもなった歯が覗く
あの歯で噛まれたら痛いだろうな
外ではしんしんと雪が降っている
今夜は魔物と二人きりで過ごすのだ
戻る
編
削
Point
(2)