【レビュー】雲雀料理11号の感想 3/4/mizu K
 
たとたれるしずくが排水口にすいこまれている場面を私は想像する。

彼の遭遇した「粘菌」とはなんだったのか。すごくありがちな解釈かもしれないけれど、それは、解離した自己、ということになるのだろう。毎日毎日、同じ地下鉄を利用することに倦みはじめていたころのこと。粘菌をはじめ遠目に見る。彼は問いかける。〈あんなふうにしていて粘菌なんてやつは/幸せなんだろうか〉。それはそのまま「こんなふうにしていて俺なんてやつは幸せなんだろうか」と自問していることになる。それから徐々に粘菌が彼を浸食しはじめる。粘菌は彼を食ってしまうだろうか。彼は食われるのだろうか。自分自身に。そのあやうい均衡の中途で、この詩は結ばれ
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