挽歌/……とある蛙
夕陽のあたる湊町
古い煉瓦の倉庫街
漂うあの歌 あの旋律は
港の悲しいエレジーで
昔の俺(おい)らの子守歌
港近くの襤褸アパートで
親父も知らずに育った俺(おい)ら
酒場の女のお袋は
酒に酔っては男と懇ろ
おいらの横でやりたい放題
お袋の相手の荒くれは
港港に情婦(おんな)をこさえ
口笛吹いては逢い引きし、
事が終われば消えて行く
なかには船が難破して
帰って来られぬ者もいる
それでも片端で帰った者は
酒場で一人飲んだくれ
どうにもこうにも
堂々巡り
昔語りのろくでなし
酒場でだれも相手せず、
酔って野良犬蹴飛ばして
自分がそのまま噛
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