ライアーの娘/
 
すべて見抜かれている

人殺しが英雄になれるように
嘘つきだって幸せになれる
俺はどこにでもいる平凡な嘘つきだから
当然のように平凡な幸せを手に入れた

「パパは今まで嘘をついたことがない」
幼い娘にそう言ってウインクすると
彼女は「うそつきー」と笑った
俺は生まれつきの嘘つきだから
いま手元にある本当のことと言えば
この無邪気な笑顔くらいだ
この笑顔を守るためなら
俺は嘘をつくのをやめたっていい
もちろん俺には最初から
娘なんていやしないのだが

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