冬へ 冬へ/木立 悟
 



夜を分ける汽車が来て
雨の端を轢いてゆく
描きかけの絵が
窓のそばで震える


水たまりの空が
雨を見つめる
現われては消える
影を見つめる


空のすべての鐘が鳴り
雨に触れては花になった
混濁と歯車
骨に降る色


月と曇を
かきわける指
蒼は土に
蒼は水に


すべてが晶になる夜を
ひとりすぎる白い影
橋の上のひとつの方位
枝が囲む何も無い空


雷が去った後もたたずむもの
風の音に消え
現われながら
渦まく灰に連なる鉄


夜を滑る かたまりの羽
森と森のはざまに立つ弦
すべてを雪に放ちながら
分かつもののない冬へ昇る


























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