小さな生き物/
 
 
息をして 生きている

小さな生き物は
壊さない
手に入るものも
手に入らないものも
目の前にあるすべてを
壊さない

小さな体の中に
雲一つない空を抱えて
いつ降るかわからない 
激しい雨のことを想っている

そして誰にも聞こえないように
零れ落ちそうな歌を そっと響かせる


歌声が空に溶けだす頃
誰もいなくなった青い野原で
空っぽの弁当箱と
空っぽの虫籠が
競う合うように 宙を舞い
そして悔しげに 落ちていった

それを照らし出した
薄く冷たい月が
雨になれない雲と共に
静かにため息をつく

小さな小さな歌声を
拾い集めるように
耳を澄まして
耳を澄まして




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