トーチカ/千波 一也
 
いい

いずれの理由でも
特別に理由などなくても
おそらく
二度目はないだろう

何の気持ちもないままに
迎える二度目はないだろう

安易な言葉の総てを受け止めるようにして
安易な言葉の総てを拒絶するようにして
風穴は今この時も音を立てている

いまや
定かにはしがたい明るみの中で
拭えぬ強固な黒点を背負わされた無数の一瞬が
海風に運ばれて聴こえくる

逃れようなど幾らもあるというのに
晴れ渡る暖かな冬の一日だというのに
それを
彼ら、を
彼女ら、を
待たせているのが見えてしまう

こんなに遠い
こんなに浅い
海岸線を走っていても








戻る   Point(3)