しとしと雨と僕の町内/こいち
何年ぶりだろうか
生まれ育った町内をあてもなくブラブラと歩いた しとしとと雨ふる朝方に
こんなかたちでここに来るなんて思ってもみなかった
逃げるように戻ってきたし
ここにはもう僕を迎えてくれる場所も無いのに
昔よく遊んだ田んぼは無いし
よく駄菓子を万引きした森文具も無いし
うるさく吠えた馬鹿犬も居ない
佐野君が住んでた高級マンションは変わらず相変わらずシンボルの様にそこに居座ってた
佐野君は四年生の冬に何処かに消えた
あまり役にたたない凄く小さな傘さしてコンクリートに埋め尽くされた小さな川沿いを歩いてもあの日の事を余り思い出せずに立ち止まり目を瞑って しとしと雨と一緒に泣いた
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