「彼岸の鐘」/
宇野康平
背骨を震わせる雨は上がり、軒下の猫は子を舐める。
都市に流れる網の目の血管は下に、下に。皮膚を潜っ
て深く。地球は幾度、吐こうとする。
閉ざされた、大勢の人が並んで歩くノイズの重なりは
不思議の河の音のように聞こえ。
目の大小問わず生き物は先に生まれた者の死、後に生
まれた者を守り、死んだ。
彼岸の鐘が鳴る頃、愛したことは皆忘れて夕日を映し
た曇りガラスには、誰も気づかぬ。
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