対岸/
千波 一也
うです
あと数ヶ月のあいだ
ここを離れられない身となったので
俳句の手ほどきを雀の頭に申し出ました
体よく断られてしまったわたしは
おそらく架橋の材として優れていたのでしょう
気がつけば
わたしは何処にも見当たらず
棟梁の鼻歌だけが聞こえるのでした
そうして
橋へと姿を変えたわたしの上を
ふしぎな生きものが
渡っているような気配がするのです
嗚呼
一度でいいから
お話を伺いたいものだ、と
しくしく朽ちながら
わたしは
いずれの岸にもいないのです
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