乞巧奠/藤原絵理子
 

七夕飾りを作った
網飾りと提灯をつけた
短冊を書いてヴェランダに飾った

あいにくのくもりぞら
空を見る気にもなれず
意味のないTVドラマを観た

ヴェランダで妙な物音がする
カーテンを開けると
洗濯機の上にパンダがいる

パンダは驚いて
たこの足にぶらさがった
あたしの黒いブラを掴んだ

何してんの?
アイマスクに丁度いいなあと思って…
不眠なの?

かわいいパンダは
いやらしい目をして
‘待遇’についての不満を述べた

かわいそうになってブラをあげた
お礼の言葉もなく
パンダは夜の闇に消えた

その夜あたしはラジコンヘリの夢をみた
そして気づいた
パンダが欲しかったのは
七夕飾りだったんだ

戻る   Point(3)