ふゆげしき/
藤原絵理子
あたしの両目には
瞬きできるまぶたがない
いつも涙を流している
見開いているのに
像はゆらゆら揺れる
世界はいつも揺れている
あたしの左手には
指輪をはめる指がない
いつも独りで綾取りしている
茶色い幻影肢が
虚空でじゃまをする
うまくできない鼓
あたしの悲しみは
宛名の読めない手紙
古いインクは雨に滲んだ
孤独の煉瓦を積んだ
あたしの城壁の中では
冬枯れて広くなった林に
カラスが鳴いているばかり
戻る
編
削
Point
(3)