誤解あるいは放棄/藤原絵理子
 

しあわせがサラサラと
指の間から
零れ落ちていく
静寂

音も立てないで
苦しみもしないで
描いた文様は
風に吹き消される

伝わらない思いを
伝えようとあがいた
その言葉はすべて
錆臭い誤解になった

喉の奥から血の臭いがする
あじさいは雨にうなだれる
あたしはカイコのように
赤い糸を吐いて繭をつくる

あなたには見えない
繭の中であたし
ミルクコオヒイを飲んだりする

サラサラと床に零れた
あたしのしあわせは
年老いた掃除婦が
上手にほうきで掃いてしまう

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