旱魃の夜/hahen
 

二度迎える零時には
広く全ての主語を解き放ち
わたし、や、ぼく、を
発音しないように
気をつけながら、
静かな旱魃に横たわって
そっと
息を引き取る

砂丘の青さに
ためらいの唸り声が
混ざり込む
眠り続けている人たち
煙草の先が燃えなくなると
ほんの少しの水分を求められて
指先がひっそりと乾いていく
眠り続けている人たち
安らかにこだましていく
一つの樹木も、草地もない
大平野を駆けて
記述の手を乾かし、
冷たく、火をつけて
眠り続けている人たち
その時水は
欠乏しているだろうけど
惜しみなく流し込んでいけ
動かなくなるまで

海の見え
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