帰化植物/山人
ない光と直線と空間、とり憑かれたうねりの渦に次々と人々が巻かれてゆく。はじけてころがされた鬱屈が其処此処に黙って潜んでいる。
巨大な建物の中をあらゆる空気が風となって吹き渡る。織り成す生活の地肌がにおいを放っている。
君はいくつもの買い物袋をぶらさげて帰ってきた。ひとつの行動が終わり、次へと向かう時のふと漏らす息遣い、そのようにいくらかの不満を口にし再び運転席に座る。
雨は少し小降りになる。
私たちの後部には、買い物袋のささやきが聞こえる。
かつて、後部座席には私たちの子供たちが乗り、行くあてのない旅のことも知らず、名もない歌をうたっていた。
すでにバイパス近くの高校のイベントは終わり、郊外に入る。雨はおだやみ、帰化植物のアメリカセンダングサは季節はずれの花を持ち、君の振る舞いのように揺れていた。
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