うで/春日線香
米びつから米をすくいあげていて
底になにか引っかかるものがあると思ったら
しなびた腕がいっぽん
計量カップのふちに指を引っかけていた
取り出してごろりと畳に投げ出した それ
黒ずんだ腕はいつから米びつの中にあったのか
わたしは知らないし家族も知らない
先祖が蔵いこんで忘れたのかもしれないし
腕もこんな漬物みたいになってさぞ無念だろう
夜には布団に入れて眠ることにした
風がびゅうびゅう吹く真夜中
なにか恐ろしい夢が足早に通りすぎていく
と思えばなんのことはない
腕がわたしの首を絞めているのだ
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