さよならユートピア/笹子ゆら
かった)。その泥のような海に攫われた輝きで心を孤独にして、もうどうしようもなく(喘ぎようもなく)終わりの見えないぬるま湯の中から出ることが出来ない人間のように、阿呆面をしながら、(せめてもう少し生きたい、と)つまらない妄想に耽っている。これが夢なら、何が良かったのか。しあわせだったのか。結実しない世界の真ん中で、きみはわたしと邂逅する(一瞬の永遠)。お互いに引き摺り合う底なし沼は、もう私たちの誰も知らない。泡も出ないその肉厚の黒に、飲み込まれて、静かに(すべてが)終わるのだ。(もう誰も、愛することはない)
戻る 編 削 Point(1)