地図/葉leaf
私は数年間とある国家試験の浪人をしていた。朝、まだ日も昇らない頃に起きだし、蛍光灯をつけて教科書を広げひたすら読んでいく。体力が充実したら定期的に答案を書いていく。それは望ましい地図を作る作業だった。受験が要求する地図に自分の地図をなるべく正確に近づけていくこと、それが私の課題だった。だが厳密には地図は一つしかない。それは私の中の地図だ。受験が要求する地図は参考書などによって示唆されはするが、その完成形が目の前にあるわけでもなかった。私は乏しい情報を頼りに自ら荒野に足跡をつけていき、自分の踏み込んだ経路とランドマークがそのまま地図になるのであった。私の地図は生成し消滅し逸脱する。教科書を読
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