手のひらの花、そしてあのひとの雪/石瀬琳々
(雪降る時間 あのひとの指がきらりとひかる、
わたしはくもりガラスの向こう側で)
あのひとを思うと 白い雪が降って、
わたしの肩にも髪にも舞い落ちる
そしてわたしは あのひとですべて埋まってしまう
どうか今すぐ来て ここに来て
雪のなかでくちづけて、あのひとを忘れてしまうよう
この世界はあのひとの雪でできている
(世界はガラス細工の函のように わたしを、
閉じこめてうつくしい)
あのひとの手のひらで 花が咲いている、
烈しく火ともえて あかく狂おしくそれは
わたしの胸のおくを焼き焦がす
どうか今すぐ来て ここに来て
雪のなかで
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