ゲトライデ/藤原絵理子
 

蕗を茹でる鍋にぶちまける
キッチンの戸棚に隠してあった
とっておきの塩
ザルツブルクで見つけた

とっておき なんて
未来を楽観できなきゃ
思い浮かばない道化芝居
あたしは無理をしていた

明日になれば
それを使うつもりだった人が
存在しなくなるかもしれないのに

茹で上がった蕗を剥く
指先で現在を確認する
軽くなった小瓶は戸棚に戻す

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