焦燥/bookofheaven
 
つみあげたものもないのに
そこに感情だけを置けという
切り取ったものは確かにそんなふうな形ではあるけれど
触れれば消えるよ

 いまだ! いまだ! いまだ!
 壁を 床を テーブルを
 こぶしで かかとで 手のひらで
 叩いて叩いて 叫んで 泣いて
 それはパフォーマンスだって気づいてる

形をつくることに長けた職人は 
そこに心を入れることをいつまでも覚えない
これがこめるべきものだと気づいても 
収める形が思い出せない
今となっては

 待っていてください
 形を思い出すから
 心を入れられる形を
 今までだって作ってきた
 そんな形でもこんどは違うものにできるから
 待っていてください

 すぐに! すぐに! いますぐに!
 叫ぶ人に 訴える人に 嘆く人に
 技を忘れた職人はささやく

 待ってください 待っていてください
 からっぽになってしまったけれど
 きっと思い出すから

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