一月を生きてみる/瀬崎 虎彦
 
結局自分が一番好きだったのは
あの人だったのだな、と
あとから思っても間に合わない

その痛みは経験として蓄えられ
次にはもっと賢くなっている
という類のものではない

手にしたはずのものをとりこぼし
目にしていながら気づくことのできない
愚かさをぼくたちはいつまでも繰り返す

それは瞬間ごとに必死に求めたせいで
その必死さの最中でさえなければ
冷静でありさえすれば、というのは嘘だ

一番好きだった人と一緒の暮らしを
ありえた未来をつかの間想像しながら
一月を生きてみる
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