夜と淵/木立 悟
 




通り雨が来る
境いめが震える
立ちはだかり
のぞきこみ
すぎてゆく


片腕の痛み
花の名となり
たましいをひとつ
門の前に置く


暗がりが立ち
静けさを梳く
たなびかないものから
またたいてゆく


言葉が凍り
寝返りをうち
わずかな航跡
言葉を描き


雨の名を呼ぶ子の声が
金と緑に阻まれている
目も口も閉ざした奏者の音が
器から器へ名を運ぶ


水たまりの化石を
すくう手のひら
門の前のたましいに
冠のように戴せてゆく


雨が眠りをまたぎ
風が雨をまたぎゆく
数え切れない無色の虹
地から空へ重なってゆく





























戻る   Point(3)