夜と淵/木立 悟
通り雨が来る
境いめが震える
立ちはだかり
のぞきこみ
すぎてゆく
片腕の痛み
花の名となり
たましいをひとつ
門の前に置く
暗がりが立ち
静けさを梳く
たなびかないものから
またたいてゆく
言葉が凍り
寝返りをうち
わずかな航跡
言葉を描き
雨の名を呼ぶ子の声が
金と緑に阻まれている
目も口も閉ざした奏者の音が
器から器へ名を運ぶ
水たまりの化石を
すくう手のひら
門の前のたましいに
冠のように戴せてゆく
雨が眠りをまたぎ
風が雨をまたぎゆく
数え切れない無色の虹
地から空へ重なってゆく
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