「肉体から出でて、呼吸の跡」/宇野康平
 
川はそのまま塊を引きずるように流れ、

糸は母と子を零度の息に落とし。

(しばし沈黙のあと)

椅子の脚を引きずる音が鼓膜を満たす。

それは悲鳴に似、烏は屑の中で生まれ、

糸は母と子を光の届かぬ深海に落とし。

山はしとしとと泣いている。

あまりにも無邪気な足跡。一つ、二つ。


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