大正琴の媼(六)/信天翁
 
        平均余命は静かに裁断され
     大河の下流へと流されてゆきます
                  でも
     老眼にそのまぼろしは映りません
                 むしろ    
  老脚にそのかげが沁み始めているのです
                 そして
天井の隅でえにしがつむじを曲げるばかりで
       
         午後七時は真夏の日暮れ
         午前七時が真冬の夜明け
                とすれば
           大正琴を弾きおえた
   正午は──白昼夢を見るのでしょうか


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