オプシオン/竜門勇気
世界中のありとあらゆる生き物が
一度は足を運んだことのある映画館
数十席の腐りかけた椅子が並んでいる
かつては誰もがここに座りたがった
八十分のフィルムしか流さない
それ以上でもそれ以下でもない
猫のクソみたいなロードムービーと
カエルの耳垢みたいなラブロマンスばかり
時々はそれが
つか結構しばしば
泣けるんだ
赤く 光る 窓辺のテーブルに
誰かが忘れたコーラが
淡い 水に つつまれて宝石みたいだ
天気雨から逃げてきた 二人の男が
笑いながらたばこに火をつける
真っ暗闇の上映中
呼吸してるのは二人と僕だけ
「気持ちのいい雨だったね」
「
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