城跡にて/吉岡ペペロ
 
歴史の知識のフィルターで

あたりを見回しながら山を上った

城跡にひとの気配を探していた

何百年か前ここには猛るひともいた

しかしこの城跡にはもう道さえないのだった


私はフィルターをはずした

そこには山枯れた自然しかなかった

私を苦しめ甘美にさせるものとの

それはいつも訣別のような儀式だった

たった何百年かで人跡は消えるのだ

なみだもなく泣けてきた

そして嬉しくもなるのだった

たった何百年かで人跡は消えるのだ


歴史の知識のフィルターで

あたりを見回しながら山を上った

城跡にひとの気配を探していた

何百年か前ここには猛るひともいた

しかしこの城跡にはもう道さえないのだった














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