形相/葉leaf
駅前の透き通った路地から
斜めに下っていく
陰だけの旅人
人を信じることを信じることができずに
スーツケースの中では きっと
愛の源がくしゃくしゃになっている
バスのタイヤに初々しく視線を伸ばすと
視線はそのまま乗客の無表情へ
さらに 消え去った昔の
咲きほころびつじつまの合った世界へ
通り過ぎる建物 やがて
通り過ぎる田園 やがて
通り過ぎる明日 ではなく
滝へと至る山道が開ける
手渡すのだ そして拒絶されるのだ
旅人は山の草木に自ら拒絶され
陰から闇へ 闇から光へ 光から石へ
山道を転がるように伝っていく
信じることは己の財宝を惜しみなく与えることである
だがそんな財宝など初めからなかった
一筋の内容と一筋の形式
それが旅人のすべてを形成し
筋の切れたところで旅人は終焉していた
道に沿って見知らぬ花が細かく咲いていて
その風景を通過するように悲しみが放たれた
陰だけの旅人は
辿り着くために出発する その
出発点に辿り着くために出発する
ところにようやく滝が見えた
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