祖母の記憶/壮佑
泣き止まない私を慰めた
秋になると祖母は
竹で編んだ箕の中に
収穫した穀物を入れて揺さぶり
殻や塵を巧みに分け除いてゆく
幼い私も真似をして遊んだが
上手くゆくわけはなかった
祖母の記憶はいつも
この作業をしている姿で終わる
或る冬の日の夕刻
村人が草叢の中に倒れている祖母を見つけた
お寺に向かう長い葬列
大人達はしきたり通り
頭に白い三角の紙を着けていた
その中に私もいて
あちらこちら動き回っていた
小学校の横の登り坂に差しかかると
私を見つけた同級生達が
校舎の窓から身を乗り出して囃し立てた
私はとてもばつが悪かった
もう 竹薮の精になって
祖母と筍を掘りに行けないのに
春に祖母のことを思い出していると
夜がだんだんと更けて行く間に
遠くの竹薮の地面がゆっくりと盛り上がり
筍が生え出て来そうな気配がある
その横で十六の娘が
鞠を突いて遊んでいる
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