哀しみのスーツ/
御笠川マコト
ちょっとした街の
ちょっとしたビルの壁に
「スーツはできる男の鎧」
冴えないコピーが貼りつく
ちょっと無理をすれば
ちょっと良さげなスーツが
手に入る歳になって
俺達はやっと気がつく
欲しかったのは
自由人の称号
ステイタスは
束縛を連れて来た
背徳
悦楽
放蕩
そんなのが俺達の憧れのはず
残されたエネルギーを
なんに使うのか知らない俺達は
柔らかなスーツに縛られながら
先の見えない列に並ぶしかない
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