四行連詩 独吟 <界>の巻/塔野夏子
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窓から滲み入る
緑を帯びた初夏の闇
思惟と夢との界面で
青い矢車菊が咲く
*
青い扉を開くと君がいる
無邪気に透明に微笑っている
おなじようにはもう微笑えない私は
思わず少し目を伏せてしまう
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長い時をかけて空に溜まりつづけた
数知れぬ沈黙のもとで
今 違う風が吹きはじめようとしている
誰のものでもない旗を はためかす風が
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六月の午前四時
蒼く飛び交う精霊たち
夢がゆるやかに終わる気配
アガパンサスの蕾の傾き
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窓に傾く月光
椅子たちの規則ただしい呼吸
片隅に白く静まる菱苦土石(マグネサイト)の欠片
そのうえに凝(こご)るちいさなひとつの願い
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少年という結界が
少しずつ解けていることにまだ気づかず
その面差しは白く
遠い夜明けを見つめている
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