夏の日/中村葵
 
17歳のころ 遠い夏の日

世界はきらきらと輝いていて
呼吸をするたびに甘く苦しかった

私の辞書は日々更新され
新しい出会いを貪るように消費した
咀嚼も消化も追いつかなかった

時を経て、夢から覚めて
辞書を読み返しても

水平線の彼方 波の音 遠い青空
貴方の瞳の叫ぶ声
硝子越しに思い出すその光景に
相応しい言葉はまだ見つからない
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