酒場の爺の世迷言/……とある蛙
 

小僧よく聞けこの俺は
四十の時には借金し
夜毎夜毎の大尽遊び
女女の毎日で
幾度も人から恨まれて
毎度毎度の刃傷沙汰で
作った借金五千億

小僧よく聞けこの俺は
五十の時には破産して
世界を股に逃亡暮らし
他人の軒に仮寝して
他人の飯をかっぱらい
歩いた街が千以上

小僧よく聞けこの俺は
還暦をむかえ、帰国して
人を騙して政治家に
嘘だけついて泳ぎ切り
あっと言う間に大臣に
そのまま人を顎で使い
うまくいったのはそこまでで
汚職にまみれて刑務所暮らし

ここから爺は泣き声になり、声の調子は低くなり、下を向いて酒啜り、こんなことを言い出した。


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