酒場の爺の世迷言/……とある蛙
 
港街のとある酒場で出会った爺
コップ酒で赤ら顔、威勢は良くて饒舌で、昔語りを捲くしたて、嘘か誠か話の先で、次第に次第に静かに眠りこむ。

小柄な爺の世迷い言

小僧よく聞けこの俺は
十五の時には家出して
街から街への放浪暮らし
幾度も幾度も死にかけて
山の上から街を見て
谷の底から月を見る
たどり着いたが
元の家


小僧よく聞けこの俺は
二十歳(はたち)のころには商売暮らし
仕入れのための旅暮らし
行く先々で買いまくり
どれも世界の珍品奇品
世間に二つと無いものばかり
仕入ればかりで増えすぎて
何が何やら見当つかず
そのまま人にくれたった。


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