ほんとうの魔法使い/栗山透
"きみのせなかについているそのまっしろなはねで
おおぞらをとびまわってせかいをしあわせにしてよ"
朝、台風の風で道路に転がったごみ箱を
邪魔にならない場所へ移動させる君の姿を
僕は自分の部屋のカーテンの隙間から見ていた
思わず叫んだ
「魔法を使ってごみ箱を消せばいいじゃないか!」
母親が大きな声でなにか僕に注意した
どうして、君は手を汚した?
午後、
みずいろの
インクのペンで
君の名前を
紙に何度も書いた
何度も、何度も、何度も
紙は薄くちぎれて段々とみずいろに変わり
やがて、空になった
僕に空を見せてくれる
君は魔法使い
夜、
僕は部屋のカーテンを閉める
眠る前に本を読む
"そらをとばない まほうつかい"
その魔法使いは歩いてまわれる範囲の人だけを助ける
髪はきらきらひかる金色でまんまるの顔をしている
僕は思わず笑ってしまう
この本を書いた人は見たことがないのだ
ほんとうの魔法使いを
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