蕎麦湯/梓ゆい
 
鍋のなかで踊る蕎麦を見つめ

何かを潰すように

何かを壊すように

菜箸を掻き混ぜる…。

もしくは

それを生き物に見立てて

趣味の悪いハンティングだと

自嘲する…。。

吹きこぼれた白い塊が

隠れ蓑にも見えて

時折一部を見せるそれらはただ

逃げているだけなのか

それとも

反撃の一瞬を狙うからなのか

菜箸の間を擦り抜ける…。。

きっと

それは想像の産物であろうと

いつもの生活と重ねて

自分自身が逃げているかの様に

脅迫を覚えた…。。

無を

意識するわけでも無く

破滅を

イメージするわけでも無く

蕎麦を追い掛ける二本の菜箸は

凶器を映した心なのだと

火を弱めて思う…。
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