水宇宙/岡部淳太郎
 
宇宙の深淵から
水がひとつぶ
滴り落ちる。 。 。
と、
いのちたちはいっせいに水際に集まり
それぞれに
祈りの言葉をつぶやく
遠い場所で起こった恩寵に
いのちの囁きは共振し
星の瞬きが波紋のように宇宙に広がってゆく

その身体に
その精神に
涙に似た水をたたえたいのちたち
普段は溢れることも
沁み出すことも ないのだが
何かのきっかけで
たったひとつぶの
仲間の落下で
彼等の湿った思いは
闇のすきまを埋めて
彼等自身が
ひとつぶずつの水であるかのように
隣のいのちに
遠くのいのちに
寄り添って 歌い始める

四十六億年の歌が
待っている

[次のページ]
戻る   Point(6)