人柱/岡部淳太郎
荒野の中に人柱が建つ
立ったまま
石と化して
柱のように天に伸びる人の残骸
人生に遅刻した者
あるいは 人生から早退した者の
群れが
向日葵のように咲き揃っている
そんな人柱の
列石
列柱が
渇いた大地に立ちすくみ
裁きも赦しもない止まった時間の中で
ただの思い出になっている
ここには太陽は存在しない
ただ
月の弱々しい光で
淋しげに照らされる
夜ともなれば
人柱の群れはぼうっと燐光を発して
開いたまま石化した掌から
閉じたまま石化した唇から
物語を
歌を
それぞれの引き換えることの出来ない思い出の
かすかなにおいを立ち昇らせる
かつて人
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