time travel/藤原絵理子
 
駅の地下にある
ちょっと特別な待合室では
スーツにバッジをつけた男が
ソファにもたれて眠っている

黒いカバンのサイドポケットから
今朝のJapan Timesがのぞいて
上着の胸ポケットに入っている
K帯のストラップが息をしている

テーブルに置いた白いポリ袋は
帰りついた家の玄関で
小さな女の子の手に渡すための
ささやかな言い訳の代わり

女の子はきっと
白いポリ袋を手に持ったまま
抱き上げられた首に抱きつくだろう
ざらざらする頬にキスするかもしれない

ここはキップを持ってる人だけが
入ることを許されてる待合室だから

あたしはソファーで脚を組ん
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