冬の雨/いねむり猫
 
たった一つ 部屋に灯る明かりが
窓ににじんで 流れていきます

一緒に座る人を失った 広すぎるソファで
私は消えてしまいそう

雨音の森で 私はいくつもの過去に迷い込み
やがて 記憶にもない深い谷で
立ちすくんでしまう

かすかな水音が 私の意識をつないでいるけれど
本当は 私はすでに いない

私の前にあるのは あなたが残した一枚の絵
顔の見えない女が 草原の風に
踊るように 歌っている

私は 暗い谷から 
一筋の光のようなその絵に 導かれて

歩み出すことは
できない

冬の雨が凍らせている
窓辺に近いソファは

にじむ光に 揺れています

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